2011/11/27

大拙寺(鈴木大拙館)四

開館時間は午後5時まで。春から夏は「まだまだ明るい時間」に閉館してしまうけど、晩秋から冬の終わりごろまではライトアップされた館に浸るコトが出来る。

これは館の北側から。画面下手前には「水鏡の庭」にほんの少しせり出している、小さいスペース(丁度一人が立てる。写真でも微かに見える)があって湖面に立った様に辺りを眺められる。
正面に見えるのは設計にあたっても重要なポイントになった樹齢100年を超える楠。
晩秋の雲が見せる淡く豊かな濃淡を背景に、暗くなるまで眺めていたい風景。

この場所は館の外なので(中村記念美術館へ続くアプローチの途中)「無料」で開放されている場である点も金澤らしい。毎日の散策途中に眺めてもいいだろう。
近所の21世紀美術館の無料ゾーン(ジェームズ・タレルの作品空間に無料で浸れる施設はかなり珍しいと思う。それも街の真ん中で)や兼六園の早朝無料&年に何回も実施するライトアップ夜間無料開園など、金澤は「市民に観賞して貰いたい文化的要素」を当たり前の様に極力負担なく見せようとする街。
とかく「前田家が百万石の豊かな財を以って花開いた文化がいまに残る・・・」と紹介されがちだけど
実はこういうトコロに金澤独自の文化が存続&発展し続けている理由の一つがある。
2011年11月25日 16時58分撮影

この場所を 金澤コンシェルジュ通信マップ で表示

2011/11/26

大拙寺(鈴木大拙館)三

開館した10月の時点でも既に素晴らしかったけど「この木々が紅葉したらどんなに綺麗だろう・・・」
と期待していたその光景を遥かに超えた風景がさりげなく展開してる11月の終わり。
以前「なんらかの前景に嵌めこまれた月を観る」のが金澤のお月見の醍醐味・・と書いた様に
風景を切り取って観せて・・見事に昇華させるのは金澤の得意技だとは思っていたけど、
この紅葉の風景はちょっと「そういう技」の次元を超えている様。
常緑樹と混じって立つ十本程(多くても十数本くらい?)の紅葉している樹が館と一体となって出現させる光景には
「紅葉が魅せる美のエッセンスがここに凝縮されている」と思える位、心を動かされる。
この館のアチラコチラに登場するモチーフ、
三角(カタチが出来る最小単位)→四角(二つ合わさって)→◯(さらに集まって無限)にも通じている様にも思う。

紅葉シーズンといえば人々が殺到する様な「辺り一面の紅葉」を思い浮かべるけど・・・
本当は僅かな本数が紅葉していく様(ズレから生じる無限のハーモニーを観賞するコト)
の中にこそ無限の味わいがあるコトを目の当たりに示してくれている光景。
そんなコトは全部置いておいても・・・単純に美しい日々刻々変わりゆく光景。
2011年11月27日15時19分撮影

より大きな地図で 金澤コンシェルジュ通信マップ を表示

2011/11/24

大拙寺(鈴木大拙館)二

「水鏡の庭」を満たす水を波立たせる装置が作動して波紋が起き始めたトコロ。(真ん中に微かに波が見える)
波紋は水深14センチの池の隅々まで伝わり跳ね返り、複雑に微かに水面を動かし続ける。
この奥には前田家筆頭本多家のお庭だった松風閣庭園が広がる。※禄高五万石(家老としては日本一の禄高)この周辺約10万坪!が本多家の広大な敷地だった。
館の設計にあたって、巧みに藩政期のモチーフも取り入れている様。
もう一方の壁が城の石垣をイメージしているとすれば、こちらはなまこ塀なのかもしれない。
極めてシンプルな白く低いラインと木々が構成するミニマルかつ無限の光景。
ちなみに池の底の目地のように見えるライン、実は隙間で水がここから湧き出るように循環している(底板の下にもう一層、水の層がある)
画面の中央、水面と白壁の間には溝があって「サーッ」と音を立てながら横一線に水が溢れ落ちている。
ふと目を凝らすとあちこちの隙間の上、水面が湧き水の様に微かに盛り上がっていたり、落水音が作る音場が意外と意識の下に降りてきたり・・・
「感じとる」ための仕掛けは細部にまで抜かりなく行き渡っている。
2011年11月10日 16時29分撮影

より大きな地図で 金澤コンシェルジュ通信マップ を表示

2011/11/21

大拙寺(鈴木大拙館)一

禅の思想を、その執筆活動(英文で書かれた23冊を含め約100冊の著作がある他、英文仏教雑誌も創刊、現代も発刊され続けている)や国内外での幅広い講義活動(晩年にあたる80歳〜89歳!まではアメリカに在住。多くの大学で講演した他、欧米各国の大学でも講義を行なっている)を通して広く世界に紹介した鈴木大拙、彼の思想を「自由に」感じてもらうコトを目的として2011年の10月、生誕の地である本多町に「鈴木大拙館」が開館した。
※例えば展示してある書籍、手紙などにはこれといったキャプションは無く「そのモノと直に対面出来る様」に配慮がなされている。
(解説リーフレットも勿論用意されている)

これは「水鏡の庭」に浮かぶ様に佇む「思索空間」
禅寺の方丈(僧侶の住居)をイメージして設計されたシンプルかつ濃密なスペース。
畳張りのベンチに座って(あるいは座禅を組んで)水面を眺めているだけでも心に何かしらの作用がある様な・・・「既成概念に囚われずに自由に大拙を感じ取ってもらいたい」そういう館の狙い通りの見事な空間。
賛助会員になれば(年間二千円)いつでも無料で堪能するコトが出来る。
(※特典として招待券6枚、会員限定イベント、会報の送付なども。他には市の16もの文化施設の共通年間パスを購入する方法もある。こちらも二千円)
毎日夕暮れにやってきてしばらく佇む・・なんて使い方もとっても贅沢だろうな。
また一つ金澤に素晴らしい「場」が誕生した。
 2011年10月22日 14時26分撮影

より大きな地図で 金澤コンシェルジュ通信マップ を表示

2011/11/17

旧市街ダイレクト・ゲート(ふらっとバス材木ルート)

旧市街を四つのルートで循環するふらっとバスは狭い路地まで入り込みユルユル、ユルユルとほんのちょっぴり走っては停って(バス停間隔は200メートルが目安)地面に近い低い床(床高28センチ)と旧市街のあちらこちらを地続きにする。
数年前から国産の汎用性ある車種に世代交代しつつあり「居間の広い窓から流れる街並みを眺めている様な感覚」はちょっと減ったけど(初代はオーストリアの車体メーカー製のとても開放的なコミュニティバスだったんだけど、故障も多く維持費がかさんだ結果廃止方向に)それでもドアが開く度「その場と地続きになるカンジ」は依然健在。
これは材木ルート(藩政期にその名が付いた材木町を通る)の武蔵ヶ辻バス停。
開け放たれたスライドドアの正面に浮かび上がるのは、近江町の顔として長年親しまれ、もうじき築80年になる建物の入り口。(実は近江町再開発にあたって曳家工事で20メートル移動している)

敷き詰められた御影石が雨で磨かれ舞台の様に、スポットに光るお店のメニューが指揮者を待つ譜面台の様にも見えて・・・「おや?ココは一体?何処かのステージに繋がってしまったのか?」なんて空想を束の間楽しんだ。

雨は街中に釉薬をかけて、夜は細部を曖昧にして・・・
現実と夢幻の間の美しい光景を旧市街のアチラコチラに出現させる。

2011年10月14日 17時29分撮影

より大きな地図で 金澤コンシェルジュ通信マップ を表示

フォロワー