2011/03/22

鏡花の街の揺蕩う水面 主計町

浅野川の流れは女性っぽく浅く優しい、と漠然と捉えている方が多いと思うけど
実は場所によって細かく流れ方、そして波音が違う。
要因は傾斜や幅や底の形状(石の大きさ、形)・・そして小橋下の可動堰の高さ。それに加え同じ場所でも日々水量によって天候によって波立ち方、色も変わる。犀川に比べ川幅も狭く水量も少ないのでそういう細かい変化がよく分かる。控え目だけどちょっぴりドラマチックに変容しつつ浅野川の水は流れている。

徐々に速度を落としながら梅ノ橋をくぐった流れは、浅野川大橋直前で急激に遅くなり、水深も深くなり(水遊びをする子供達のために注意を促す看板も立っている)主計町を映すあたりは、たっぷり水をたたえた湖の様にも見える。(波音もやむ)
しばらくウォーターフロントの様なたゆたう水面を見せた川は(可動堰の塩梅でサラサラ流れている時もあるけど)小橋下で垂直落下する水音を伴いながらまた元の流れに戻る。
穏やかな水面には夕暮れになると主計町の家並みがユラユラ映り「川沿いの茶屋街」の情緒にさらなる深みを加える。
鏡花の生まれ暮らした界隈はこのすぐ裏あたり。
時は流れてあちこちに煌々と灯りがともる現代でも、夕暮れ時から深まるこの界隈の妖美さは今も昔も変わらずそのまま。
2010年4月17日午後6時44分撮影

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2011/03/20

夜桜艶姿 宇多須神社


宇多須神社はひがし茶屋街の奥に位置するだけあって、2月3日の節分祭では東の芸妓衆が踊りを奉納し福豆をまき、
拝殿には東郭の文字が入った大きな灯りが下がっていたりと、何かと艶やかな印象の神社。
結婚式もよく行われ、こちらで式を上げた後、ひがしの二番丁(メインストリート)を歩く新郎新婦の姿は
茶屋街のちょっとした風物にもなっている。
そんな宇多須神社の境内に咲く満開の桜が暖かい無風の夜に濃い匂いを振り撒いて、
背後に位置する卯辰山から静かに降りてくる木々の香りと混じりあい、
なんとも言えない甘い春の夜の空気が充満する。
お参りを済ませ、そんな空気を胸いっぱいに吸い込みながら夜桜と対峙していると
無意識の底からふつふつと幸せな心持ちになってくる。桜の、そして春の夜の魔法。
2010年4月9日午後11時51分撮影

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蓮昌寺 桜舞台


ひがし茶屋街から横道へ逸れて卯辰山山麓寺院群の“迷宮”に足を踏み入れると、ほどなく山門へ続く石段が現れる蓮昌寺。少し離れたお隣りの西養寺ほどの段数はないけど、登るコトによって生まれる街並みとの距離感は絶妙。
泉鏡花の絶筆「縷紅新草」にも「燈籠寺」として登場するこのお寺、山門前にそびえる榎もなかなかの“役者”だけど、なんといってもこの「大桜」は圧倒的な存在感を放つ看板役者。
さしずめ繊細で妖艶な表現力で名を馳せる大物女形、といったトコロか・・・
写真ではよく分からないけど、枝が随分下まで垂れて横にも広がり、境内狭しと咲き誇る。
お寺の塀に囲まれているコトもあり、下(街)からは「そこまでの枝ぶり」であるコトは分からない。山門をくぐって初めて・・・その見事な広がりに驚かされる。
これは珍しく春の嵐が数日に渡って吹き荒れ・・・そこそこ散ってしまった後のある日、だけど、それはそれで・・・・花びらに埋め尽くされた地表が桜を映す湖面の様にもみえ・・・思わず見惚れる桜風姿。2010年4月14日午前11時18分撮影

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2011/03/14

風化紅葉柄石段 觀音坂


起伏の多い金澤旧市街では、日常生活の中に坂や石段を昇り降りする機会が自然と組み込まれているコトも多く、それは日々無意識のうちに「ダイナミックに連続して変化する風景」を目にしていたり、このようについ下を観て「ハッと」する機会が多いというコトでもある。

藩政期、毎年の祭礼時に神事能(当時の庶民にとって大きな楽しみだった。その日は皆ワクワクしながら登ったんだろうな)が開催された観音院に続くこの坂は、金澤らしいしっとりとした風景の変化もさることながら、つい見下ろす足元、石段の折々の美しさにもハッとするコトがしばしばある。
日当たりのよい南向き斜面、秋に枝から離れた紅葉の葉は雨に曝され陽があたり、人々に踏み固められ・・・冬になって雪が積もって溶けて陽があたり踏まれて・・・春を迎える前には色も抜けて厚みもなくなり、風化して石段と一体化したような風情。金澤で今も発展を続ける伝統工芸のモチーフの様にも見える(作家さん達が日々目にするこの様な景色から自然と影響を受けているコトは間違いないだろう)
画面中央から少し左下に一片、フワフワした水鳥の胸毛(ダウンボール)も落ちて留まっているのも、私にはこの周辺の豊かな生態系を感じるワンポイント。
春になれば、桜が散り椿が落ちて、時として妖艶な雰囲気すら漂う見事な光景を見せてくれる。金澤の日常に潜む、本当の金澤の美の一つ。
2011年2月27日午後0時22分撮影

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松と雪と美術館


淡い雪の照り返しに浮かび上がる薄暮の美術館。
冬のグラデーションを見せる低く垂れこめた雲と松の調和も美しい、夕暮れの一コマ。
マジック・アワーが全てを愛おしくまたちょっぴり現実離れさせている。
私は金澤では比較的広い空が望める犀川沿いで多くの時間を過ごしたので
冬の灰色のグ空のグラデーションの細かさには子供の頃からしばしば見惚れていたけど、市の中心に出来たこの美術館によって「金澤の空が見せる多彩な表情」を再発見した人も多いと思う。
極めつけは年中入場無料(そして夜は10時まで開館)の「タレルの部屋」
(正式名「ブルー・プラネット・スカイ」)
金澤にはまさにうってつけの作品空間。「空の表情の微妙な移り変わり」を見事に昇華したカタチで鑑賞出来る。
何度も書いているけどこの美術館と金澤の光のコラボレーションは素晴らしい。
筋向いの兼六園は江戸時代の、こちらは現代の、それぞれ見事な金澤の趣鑑賞施設。
2011年1月7日午後5時25分撮影

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2011/03/13

東山逍遥 雪の夜


昼間は観光客で賑わう東山界隈はめっきり人出の少なくなった夜にこそ、茶屋街本来の落ち着いたしっとりした姿を現す。
例によって降っては溶けの金澤の雪。
三月始めのこの日も新雪ように薄く真っ白く積もった雪明りの中、冬ならではの夜の光景を見せる。
こんな時に何処を目指すでもなく・・・ふらりふらり茶屋街を彷徨い歩くのも、其処此処に金澤らしい空気を感じられる楽しい時間。
正面に明りを灯す建物は、芸妓さん出身のソムリエ女将がカウンターに立つ、いかにも茶屋街らしい洒落たワインバー。
微かに華やかな声が漏れ聞こえてきそうだ。
2011年3月3日午前零時26分撮影。

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霞ヶ池 満開の雪花


2010年から11年にかけて金澤には何度も雪が降った。こんなに降るとさすがにいろんなコトがちょっぴり大変で、住んでいる人達が「冬晴れの続く太平洋側を羨ましく思う」気持ちも分かる。(経験上、春から秋までは金澤の方が天候に恵まれている日が多いのだけど)
でもその雪を「この場所でしか見られない風景として味わい楽しむ」方向に意識を向けられれば「不便な中にも変化に富んだ数々の美しい瞬間」があるコトに気付くでしょう。
雪には「雨にいろんな降り方がある」のと同様にいろんな大きさ、舞い降り方がある。窓から空を見上げるだけでも実はなかなか見飽きないモノなのだ。
この日の兼六園、霞ヶ池の畔ではすっかり葉を落としている枝全体に湿気をタップリ含んだ大きな雪片がゆっくりゆっくり纏わり、覆い・・・ビッシリと雪の花が咲いたよう。
見渡す限りモノトーンの、水墨画のような空間に真っ白い雪花が満開に咲く。
ちょっとだけ足元悪いですが・・・「雪の金澤」この時だけの風景に出会えます。
2011年3月3日午後3時38分撮影

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